厚生局の指導等及び医療監視への対応策

 前回に引き続き『療養担当規則』についてご説明いたします。

一部負担金等の受領
第5条 保険医療機関は、被保険者又は被保険者であった者については法第74条の規定による一部負担金、法第85条に規定する食事療養標準負担額(同条第2項の規定により算出した費用の額が標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「食事療養標準負担額」という)、法第85条の2に規定する生活療養標準負担額(同条第2項の規定により算定した費用の額が生活療養標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「生活療養標準負担額」という)又は法第86条の規定による療養〔法第63条第2項第1号に規定する食事療養(以下「食事療養」という)及び同項第2号に規定する生活療養(以下「生活療養」という)を除く〕についての費用の額に法第74条第1項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額(食事療養を行った場合においては食事療養標準負担額を加えた額とし、生活療養を行った場合においては生活療養標準負担額を加えた額とする)の支払を、被扶養者については法第76条第2項、第85条第2項、第85条の2第2項又は第86条第2項第1号の費用の額の算定の例により算定された費用の額から法第110条の規定による家族療養費として支給される額に相当する額を控除した額の支払を受けるものとする。
2 保険医療機関は、食事療養に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第85条第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を、生活療養に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第85条の2第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を、法第63条第2項第3号に規定する評価療養(以下「評価療養」という)、同項第4号に規定する患者申出療養(以下「患者申出療養」という)又は同項第5号に規定する選定療養(以下「選定療養」という)に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第86条第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を受けることができる。

一部負担金等の受領については、療養担当規則第5条の規定により、患者から受領できる費用の範囲が以下のとおり定められています。

患者に負担を求めることができるもの

 ①患者一部負担金

 ②入院時食事療養費・入院時生活療養費の標準負担額

 ③保険外併用療養費における自費負担額

 ④療養の給付と直接関係のないサービス等の実費

これらの費用は、原則的に全ての患者から徴収する必要があり、特定の患者(職員、職員の家族等)に対して減免等の措置を取ってはならないこととされています。

患者に対しても同様に、保険請求は行うが、患者の負担分を考慮して一部負担金は請求しないという選択を行うことも認められません。

以前は、職員や職員の家族の受診分をそのまま福利厚生費として一部負担金を徴収されていないケースもありましたが、現在は、療養担当規則上でも禁じていることから、職員であっても窓口での支払いが義務付けられており、個別指導や監査でも必ず確認される等、厳密さが要求されています。

 税務調査上でも窓口収入計上から患者自己負担金分の計上を漏らすと診療人数の不一致などで不正と判断されることもあります。ただし、一旦支払いを行った領収書の金額を勤務先の医療機関が職員へ支給することは問題ないとされています(福利厚生費として計上)。

自己診療について

 医師が、自身に対して診察し治療を行うことを「自己診療」といいます。健康保険法等に基づく現行の医療保険制度は、被保険者等の患者(他人)に対して診療を行う場合についての規定であるとされているため、自己診療を保険診療として行うことについては、現行制度下では認められていません。保険診療として請求する場合は、同一の保険医療機関であっても、他の保険医に診察を依頼し、治療を受けなければなりません。

当然、診療録を作成し、診療内容の記載が必要であり、一部負担金の徴収も必要になります。

領収証等の交付
第5条の2 保険医療機関は、前条の規定により患者から費用の支払を受けるときは、正当な理由がない限り、個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない。 2 厚生労働大臣の定める保険医療機関は、前項に規定する領収証を交付するときは、正当な理由がない限り、当該費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。 3 前項に規定する明細書の交付は、無償で行わなければならない。 第5条の2の2 前条第2項の厚生労働大臣の定める保険医療機関は、公費負担医療(厚生労働大臣の定めるものに限る)を担当した場合(第5条第1項の規定により患者から費用の支払を受ける場合を除く)において、正当な理由がない限り、当該公費負担医療に関する費用の請求に係る計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。 2 前項に規定する明細書の交付は、無償で行わなければならない。

 以前は、医療機関で金額だけを記載した領収書が発行されていましたが、平成18年の診療報酬改定で個別の費用ごとに区分した領収書の交付が義務付けられ、その後、平成22年の診療報酬改定時に、診療内容や薬の種類などが分かる「明細付き領収書」を無料で発行することとなりました。

平成28年の診療報酬改定では、窓口支払のない公費医療を受けている方へも明細書の交付が義務付けられることとなっています。

これまでの「検査」、「投薬」、「注射」、「処置」のように大まかな見出し的項目のみの内容が、明細付き領収書では、具体的な検査名や薬剤名が単価とともに記載されているため、患者側にとっては、個別の医療行為ごとの金額(負担内容)を詳しく知るきっかけとなりました。

その際、病名告知や患者のプライバシーにも配慮するため、明細書を発行する旨を院内掲示等により明示するとともに、会計窓口に「明細書には薬剤の名称や行った検査の名称が記載されます。明細書の交付を希望しない場合は事前に申し出て下さい。」と掲示すること等を通じて、その意向を的確に確認できるようにすることが求められています。「明細書の交付を希望しない場合は事前に申し出て下さい。」と掲示すること等を通じて、その意向を的確に確認できるようにすることが求められています。

各医療機関では、掲示が行われていますが、患者側からすると目につかず、結果、申し出る旨を知らずに病名告知につながるケースもあるとのことで非常に重要な問題につながります。したがって、掲示を行う際に大切な内容は、文章だけではなく、イラストの挿入やカラー印刷を行い、患者側へ「分かりやすい・伝わりやすい」掲示を心がけることが重要です。

能見 将志 プロフィール

診療報酬担当専門研究員。診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。
診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。

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