HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.80「医療現場にひそむスティグマ~ その一言は、誰のため? 制度と接遇の狭間で ~④」

前回は、制度や配慮が、必ずしも「その人の望み」と一致しない場合があることを、 事例を通して見てきました。 今回はその続きとして、スティグマの心理的背景と、 事務長として現場で見えてきたことをお伝えします。

■スティグマの背景にある心理

スティグマの背景には、「ラベリング」「内在化スティグマ」といった心理的な要因があります。

他者から貼られたレッテルが、いつの間にか自分自身の評価になってしまう

そうなると、支援を受けること自体が苦しくなります。だからこそ、医療につながりにくくなる――これが、スティグマの最も怖いところです。

■接遇としてできること~ 判断の主体は誰か ~

接遇というと、丁寧な言葉遣いや柔らかな態度に目が向きがちです。けれど本当に大切なのは、「相手を尊重する」 という視点です。そして判断することはその人そのものなのです。

「使わないと損ですよ」ではなく、

⇒「利用するかどうかは○○さんが決めることです」

「こちらで進めますね(いいですね!)」ではなく、

⇒「どんな選択をされたいか、聞かせてくださいね」

・・・という相手を尊重する態度や言葉そのものなのです。

制度の説明と同じくらい・・・いえそれ以上大事なことは、患者さんの人生の選択を尊重する姿勢ではないでしょうか?

その姿勢が、スティグマを断ち切る第一歩になります。

■事務長(管理者)という立場で見えてきたこと

事務長(管理者)になると、患者対応そのものより、職員への声かけや、現場の空気に目が向くようになります。

「あの対応、少し引っかかったな」

「悪くはないけれど、違和感がある」

以前は、「考えすぎかもしれない」と流してしまっていました。現場が忙しかったということもあるかもしれません。けれど考えてみてください。

その違和感こそが、現場を良くする入口ではないでしょうか?

■正解を教えない、という管理

職員に対して、「そんなつもりじゃなかったのよね」と声をかければ、場は一旦収まります。しかし同時に、考える機会も、学ぶ機会も失われてしまいます。事務長(管理職)に求められているのは、正解を示すことではなく、問いを残す(余白を残す)ことなのかもしれません。

「どういう思いで、その言葉を選んだのか」

「別の伝え方はあり得ただろうか」

責めずに、静かに問いかける。

それだけで、現場の空気は少し変わります。

■事務長からのメッセージ~ 考えてもいい空気をつくる ~

制度を理解し、医療の立場を意識すればするほど、私たちは「正しいこと」「正解」を選ぼうとします。けれど、正しさだけでは守れない尊厳があります。正しいことだから、それは良いことだとは限らないということがある、ということを知りましょう。

その一言は、
〇誰のための言葉だったのか。
〇相手に「選ぶ余地」を残せていただろうか。
〇相手の想いを知ろう・理解しようとしただろうか?

このように、立ち止まって考えることを、現場で許せるかどうか。考えが変わってもいいし、迷ってもいい・・・。そんな空気をつくることが、管理者の役割なのだと思います。スティグマは、なくそうと意識しすぎると、かえって見えなくなります。

だからこそ、ふとした違和感を大切にしながら、立ち止まって考え続けること。それが、患者さんと職員、双方の尊厳を守る、大切な医療接遇になるのではないでしょうか。

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