HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.78「医療現場にひそむスティグマ~ その一言は、誰のため? 制度と接遇の狭間で ~②」

前回は、受付カウンターでの何気ないやり取りの中に残った「違和感」についてお伝えしました。
今回はその続きとして、配慮のつもりだった一言が、どのようにスティグマにつながっていくのかを見ていきます。

■配慮のつもりだった、その一言

ある日のことです。難病の治療を続けている患者さんに、医療費助成制度の説明をしている場面に立ち会いました。「この制度を使わないと、治療費がかなりかかりますからね」説明としては、間違っていません。患者さんの費用負担を思えば、むしろ親切な言葉だったと思います。けれど、患者さんは一瞬言葉を失い、「少し考えさせてください」とだけお答えになりました。

その場では、それ以上のやり取りはありませんでしたが、患者さんは口数が少なくなってしまい・・・。
・・・その様子を見ながら、後からふと思ったのです。

――この言葉は、本当に「患者さんのため」だったのだろうか。それとも、「制度を説明しなければならない私たち医療者のため」だったのではないだろうか・・・と。

■スティグマは、医療の中で静かに生まれる

スティグマ(stigma)とは、もともと「烙印」を意味する言葉です。消えない印、負のレッテル。
そう・・・スティグマとは、社会が特定の人に押しつけてしまうイメージのことを指します。

医療現場に置き換えると、それは決して露骨な差別ではありません。

・病気があるから。
・年齢が高いから。
・生活が大変そうだから。

そうした情報をもとに、「こうしたほうがいいだろう」「この選択が最善だろう」と判断します。そこに悪意はありません。
むしろ、専門性と経験に基づいた医療者としての“正しさ” があるからこそ、判断は早く、言葉は滑らかになります。

しかし――
医療の立場を意識すればするほど、スティグマは生まれやすくなる。つまり、その判断が患者さんにとっては、「レッテル」を張られてしまったように感じられる・・・。それが、この問題の難しさなのだと思います。私たち医療職はつい忘れてしまいがちになりますが、忘れてはいけないことだと思います。

次回は、制度と接遇の狭間で患者さんが感じている葛藤と、具体的な事例を通してスティグマの正体を掘り下げていきます。

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