厚生局の指導等及び医療監視への対応策

いつもお世話になっております。M&C能見です。問い合わせの多い厚生局の指導などについてお伝えします。

保険診療のルールについて

国民健康保険や社会保険等の健康保険などの公的医療保険制度が適用される診療(保険診療)を行なっていくためにはルールがあります。それを定めたものが「療養担当規則(保険医療機関及び保険医療養担当規則)」です。

また、その請求に関しては、健康保険法により「療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより算定する」とされ、診療報酬点数表が告示されています。

したがって、保険診療を提供するに当たっては、この療養担当規則に則って診療を行ない、行なった診療行為の請求に当たっては、診療報酬点数表に則って行なわなければならないこととなります。

そこで、指導・監査で確認されることは、この療養担当規則及び診療報酬点数表に定められたルールで保険診療が行なわれているかどうかという点であり、もし守られていなければ指導が行なわれ、さらにルール違反が悪質であると認められるような場合(不正請求等が疑われる場合)は監査という流れになります。

<保険診療の基本的ルール>

保険診療は、健康保険法等の各法に基づく、保険者と保険医療機関との間の「公法上の契約」に基づいている。

保険医療機関及び保険医であるということは、健康保険法等で規定されている保険診療のルール(契約の内容)を熟知していることが前提となる。

保険医が保険診療を行なうにあたっては、保険診療のルールを遵守する必要がある。

保険診療として診療報酬が支払われるには次の条件を満たさなければならない。

保険医が(地方厚生局へ登録された)保険医療機関において(地方厚生局で指定を受けた)健康保険法、医師法、医療法、薬事法等の各種関係法令の規定を遵守し『療養担当規則』の規定を遵守し医学的に妥当適切な診療を行ない診療報酬点数表に定められたとおりに請求を行なっていること。

指導対象となる保険医療機関等及び保険医等の選定

指導には3種類あり(集団、集団的個別、個別)、その違いは前回でご説明しましたが、今回はその指導となる保険医療機関等の選定基準をお伝えいたします。

集団指導
診療報酬の改定時保険医療機関の指定(又は更新)時保険医の新規登録時共同指導(特定共同指導)時
集団的個別指導
保険医療機関等の機能、診療科等を考慮した上で診療報酬明細書の1件当たりの平均点数が高い保険医療機関等(ただし、取扱件数の少ない保険医療機関等は除く。)について1件当たりの平均点数が高い順に選定レセプト1枚当たりの点数が都道府県平均よりも高い医療機関(病院は1.1倍以上、診療所は1.2倍以上)のうち、上位8%に相当するものなお、集団的個別指導又は個別指導を受けた保険医療機関等については、翌年度及び翌々年度は集団的個別指導の対象から除く
個別指導
支払基金等、保険者、被保険者等から診療内容又は診療報酬の請求に関する情報の提供があり、都道府県個別指導が必要と認められた保険医療機関等個別指導の結果、措置が「再指導」であった保険医療機関等又は「経過観察」であって、改善が認められない保険医療機関等監査の結果、戒告又は注意を受けた保険医療機関等集団的個別指導の結果、指導対象となった大部分の診療報酬明細書について、適正を欠くものが認められた保険医療機関等集団的個別指導を受けた保険医療機関等のうち、翌年度の実績においても、なお高点数保険医療機関等に該当するもの(ただし、集団的個別指導を受けた後、個別指導の選定基準のいずれかに該当するものとして個別指導を受けたものについては、この限りではない。)正当な理由がなく集団的個別指導を拒否した保険医療機関等その他特に都道府県個別指導が必要と認められる保険医療機関等

個別指導の連絡

事前に、

①指導目的、②指導日時・場所、③出席者、④準備すべき書類などが記載された通知が送付されてきます。

特に事前に電話連絡などはありません。

指定された日時が難しい場合は、正当な理由を申し出れば日時の変更も可能です。

個別指導は、指導月の3ヵ月ないし半年ほど前の連続した2ヵ月分のレセプトを対象に面接懇談方式で行なわれ、それに対応する診療録等の関係書類の用意が必要となります。

診療所は指定された会場に出向き、病院の場合はその施設に行政側が訪れて行なわれます。

ただし100床未満の病院については指定会場で指導を行なう都道府県もあります。

個別指導の流れ

指導官によるレセプトとカルテを突き合わせながらの質問・指摘等の指導が行なわれます。

具体的な指導内容は、

①カルテ・レセプトの様式、②傷病名の転帰、③カルテの「既往症・原因・症状・経過」欄、「処方・手術・処置」欄の記載、④治療内容、⑤保険請求内容、⑥会計欄の記載、一部負担金、⑦院内掲示などです。

病院では通常、この指導の前に院内巡視が行なわれます。

そこで、①院内掲示、②標榜科目・診療時間、③届出図面と実際の使用用途(診察室、薬局、病棟、リハビリテーション室など)が相違ないか、あるいは運用上問題がないか等を確認されます。

指導が終わるといったん休憩に入り、行政側がその日の講評内容をまとめる作業が行なわれます。その内容はカルテ・レセプト(=診療・請求)に関するものと自主返還金に分けて口頭で伝えられたうえで、後日文書で正式に送付されてきます。

指導対象となった場合

<集団的個別指導>

翌年度においても高点数保険医療機関に該当した場合、翌々年度に個別指導が行なわれます。

<個別指導>

下記の4つの評価に分けられます。

おおむね妥当

ほぼ適切として指導終了。

経過観察

適正を欠くものの軽微であり改善が期待できるとして、半年から1年にわたりレセプトの経過観察が行なわれ、改善がみられれば指導終了、改善されなければ再度個別指導が行なわれます。

再指導

妥当・適正を欠く部分が認められ、改善状況を判断するために概ね1年以内に再度個別指導が行なわれます。

要監査

監査要綱に該当すると判断された場合に後日監査、もしくは明らかに不正・不当が発見された場合、直ちに指導を中止し、切り替えて監査が行なわれます。

自主返還となった場合

算定要件を満たさないとの指導が行なわれた場合は、指摘された内容を医療機関が自主点検を行ない、問題部分の報酬を返還する作業が必要になります。最近の指導としては、請求の誤りだけではなく、診療録への医師等による根拠となる記載が乏しいもの、不必要と判断された検査、投薬、注射などもその対象となります。

返還分は、厚労省通知では指導月の前月から1年以上と定められていますが、「通常のケースは1年分・監査に相当する悪質なケースは5年分」などと取り決めている都道府県もあります。

返還分はその医療機関に支払われるべき診療報酬から差し引かれるかたちで納めることになりますが、金額が非常に大きい場合は医療機関から分割払い等で直接支払基金等に返還する場合もあります。

よく、自主返還を行なうにあたりどこまで徹底的に確認して行なうべきか、どのくらいの金額を返還するべきかとの質問がありますが、この判断は医療機関側に委ねられます。

金額にこだわるのではなく、指摘された内容をしっかり読み取って、その指摘内容に該当するか否かという適切な判断基準をもって院内で確認し対応していくことが必要です。

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