「デジタルコーチングについて」

 近年、コーチングは人材育成において非常に効果的な手法であると広く認識されるようになり、管理職育成やリーダーシップ開発、エンゲージメント向上などを目的として、多くの組織で導入が進んでいます。それに伴い、コーチングを実践するためのスキルやツールに関する情報発信も増加しています。特にコロナ禍を経て、対面での支援が困難となる中、オンライン会議ツールやデジタルプラットフォームを活用したデジタル・コーチングが急速に普及しました。こうした状況を背景に、海外ではデジタル・コーチングの有効性や課題を学術的に検証する研究が徐々に蓄積されつつあります。

 デジタル・コーチングとは、オンライン会議ツールや電話、専用プラットフォームを活用して実施されるコーチングを指しており、近年ではAIを活用したコーチングボットも含めて、同じ「デジタル・コーチング」という枠組みで扱われています。多くの研究において、デジタル・コーチングは対面コーチングと概ね同等の成果を示すことが報告されています。具体的には、リーダーシップ能力の向上、ストレスや不安の軽減、ウェルビーイングの改善、自己効力感やレジリエンスの強化といった側面において、一定の効果が確認されています。一方で、初期段階では信頼関係やラポールの形成に時間を要する傾向があり、非言語情報が制限される環境下では、コーチ側により高度な傾聴力や言語化能力が求められることも明らかにされています。

 また、効果測定の多くが自己申告による主観的評価に依存している点も課題とされています。今後、評価指標や測定方法の標準化が進むことで、「コーチング」という技術や手法自体が、より体系的に洗練されていくはずです。加えて、デジタル・コーチングにおいては、通信環境や情報セキュリティ、守秘義務への配慮、デジタル疲労、コーチ自身のデジタル適応力の差といった、導入・運用上の実務的課題も明確に示されています。

 とはいえデジタル・コーチングは高い拡張性と柔軟性を備えた人材育成手法であり、今後はAIとの融合や学習データの活用によって、職場学習や人材開発の中核的な手段になり得ることが研究者によって示唆されています。特に、多忙な管理職や専門職が多い領域においては、時間や場所に制約されずに実施できるデジタル・コーチングの価値は、今後さらに高まっていくものと考えられます。

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