厚生局の指導等及び医療監視への対応策

保健医療機関において「必要医業収益の確保」、「医療機関の存続・発展」という点では、今後の診療報酬改定や医療制度改定の方向性及び改定内容をしっかり把握することが重要となります。さらに重要な点として、医療機関の運営、診療報酬を算定する上で遵守すべきルールを理解しておかなければなりません。

保健所の医療監視や地方厚生局による指導の厳格化が進められています

今までは、大規模病院を中心に重点的に行われていましたが、中小規模病院やクリニック等において不正請求の実態が明るみになり、適時調査の期間が短くなっています。もし、地方厚生局により施設基準の不適合、不正請求を指摘された場合は、診療報酬の返還が生じるケースがありますし、さらに悪質な不正と判断された場合は、保険医療機関の業務停止、最悪な場合、取り消しという処分が行われるケースもあります。

<個別指導件数>

  医科 歯科 薬局 合計
平成27年度 1,566件 1,331件 1,506件 4,403件
平成28年度 1,601件 1,324件 1,598件 4,523件
平成29年度 1,628件 1,314件 1,675件 4,617件

<集団的個別指導件数>

  医科 歯科 薬局 合計
平成27年度 4,305件 5,002件 3,928件 13,235件
平成28年度 4,630件 4,920件 4,130件 13,680件
平成29年度 4,426件 4,971件 3,827件 13,224件

<適時調査件数>

  医科 歯科 薬局 合計
平成27年度 2,561件 0件 1件 2,562件
平成28年度 3,356件 7件 0件 3,363件
平成29年度 3,632件 10件 1件 3,643件

<監査件数>

  医科 歯科 薬局 合計
平成27年度 37件 45件 8件 90件
平成28年度 28件 39件 7件 74件
平成29年度 25件 33件 8件 66件

<保険医療機関指定取り消し件数>

  医科 歯科 薬局 合計
平成27年度 4件 11件 0件 15件
平成28年度 3件 13件 1件 17件
平成29年度 4件 9件 0件 13件

<返還金額>

  指導によるもの 適時調査によるもの 監査によるものもの
平成27年度 45億1,089万円 76億3,351万円 2億9,297万円
平成28年度 40億8,898万円 43億5,931万円 4億4,705万円
平成29年度 31億2,641万円 36億7,539万円 3億9,709万円
  • 平成27年度は全国で124.3億円の返還事例が生じています。
  • 平成20年前後の返還金額の平均が同様の資料によりますと約43億円ですから3倍に近い数字となっています。
  • 近年との比較でも返還金額の上昇が目立っています。適時調査の件数においても、平成27年度の返還金額以降の2年間で件数の上昇が分かります。
  • 平成27年度は、適時調査1件につき約300万円の返還が生じており、直近3年間の平均でも1件当たり約160万円の返還となっています。

指導や調査は、不正請求等を防止する役割を担う訳であるため、頻繁に行なわれていくことが考えられます。医業収益が確保できたとしても、守るべきルールが徹底出来ていなければ、医療機関の存続と発展は難しいこととなります。

今月は、定例報告の時期ですから、施設基準に則り院内の基準の確認と管理、そして正しい請求を行っていきましょう。

(データ出典元)

厚生労働省

「平成27年度における保険医療機関等の指導監査等の実施状況」

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000146543.pdf

「平成28年度における保険医療機関等の指導監査等の実施状況」

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000188991.pdf

「平成29年度における保険医療機関等の指導監査等の実施状況」

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188884_00004.html

能見 将志 プロフィール

診療報酬担当専門研究員。診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。
診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。

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