運営指導について
厚生労働省は3月11日、昨年度の介護サービス事業所・施設に対する自治体の指導・監査の実施状況を公表しました。全国の運営指導の実施件数は5万424件となり、コロナ禍で急減していた状況から回復し、5万件を超える水準となりました。自治体が所管する事業所・施設数に占める運営指導の実施率は全国平均で16.2%となっており、コロナ禍で制限されていた行政の監督機能が平常の状態に戻りつつあることがうかがえます。
一方で、昨年度に指定取り消しや効力停止などの行政処分を受けた事業所・施設は158件となり、前年度の139件から増加しました。処分理由として最も多いのは介護報酬の不正請求であり、このほか高齢者虐待などの人格尊重義務違反、法令違反、人員基準違反、虚偽答弁などが挙げられています。こうした行為は利用者に不利益を与えるだけでなく、介護保険制度全体への信頼を損なうものとして、厚生労働省も強い懸念を示しています。
もっとも、介護報酬を巡る問題を考える際には、近年の制度の複雑化にも目を向ける必要があります。介護報酬は近年、処遇改善加算や生産性向上推進体制加算など、政策目的を持った加算が増え、算定要件やデータ提出などの手続きも高度化しています。例えば生産性向上推進体制加算では、業務改善の取り組みやテクノロジー導入、効果測定のためのデータ提出などが求められますが、現場からはタイムスタディ調査の負担の大きさやデータ解釈の難しさを指摘する声も上がっています。
もちろん不正行為は許されるものではありませんが、制度が高度化する中で、現場の理解や運用との間にギャップが生じやすくなっている側面もあります。運営指導の件数が回復している今こそ、各事業所が法令遵守の体制を整えるとともに、制度そのものについても現場の実態に即した分かりやすい設計が求められていると言えるのではないでしょうか。

