入院料等の算定における届出上の留意点

診療報酬専門研究員の能見です。今回は「入院料等の算定における届出上の留意点」について解説します。

「届出制」について

 「届出制」とは、ある行為にあたって監督官庁に事前通知する義務を課した制度のことです。よって、届出された書類が施設基準等に適合しているかどうか、行政側が書面上の審査を行うものの、届出時の実地検査は行なえていません。

書面上問題なければ、手続き上は受理され、算定可能となります。

届出書類が適切かどうかは、医療機関側の責任とされる点が「承認制(許認可制)」と大きく異なるところです。行政による届出内容の確認は、「適時調査」と「定例報告」で行なわれます。なお、施設基準要件に合致していないとされ、届出受理が取り消されるような場合には、最も重い処分の経済的なペナルティ(診療報酬の返還)が課せられます。そして、その返還額によっては、医業経営に大きな影響を与えることになりますので、細心の注意が必要です。

「入院診療計画」について

 入院料を算定するうえで、入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制について厚生労働大臣が定める基準に適合していない場合は、入院料の算定が出来なくなります。よって、必要な体制を医療機関全体で恒常的に構築しておく必要があります。

入院診療計画の基準

  1. 患者が入院した日から起算して7日以内に、入院診療計画が文書により交付され、説明されていること。
  2. 医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し、文書により病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等について説明を行う。また、入院中から退院後の生活がイメージできるような内容であり、年月日、経過、達成目標、日ごとの治療、処置、検査、活動・安静度、リハビリ、食事、清潔、排泄、特別な栄養管理の必要性の有無、教育・指導(栄養・服薬)・説明、退院後の治療計画、退院後の療養上の留意点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し患者に対し、文書により説明が行なわれている場合には、各保険医療機関が使用している様式で差し支えない。
  3. 入院時に治療上の必要性から患者に対し、病名について情報提供し難い場合にあっては、可能な範囲において情報提供を行い、その旨を診療録に記載する。
  4. 医師の病名等の説明に対して理解できないと認められる患者(例えば小児、意識障害者等)については、その家族等に対し行なってもよい。
  5. 入院期間が通算される再入院の場合であっても、患者の病態により当初作成した入院診療計画書に変更等が必要な場合には、新たな入院診療計画書を作成し、説明を行う必要がある。

適時調査における主な指摘事項

  • 症状の記載がないものが見られるので改めること。
  • 特別な栄養管理の必要性の有無が記載されていない例が見られるので改めること。
  • 医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定すること。
  • 入院期間が7日以内の患者に対しても、医師、看護師その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定すること。
  • 治療計画の記載が不十分な例、検査内容及び日程、推定される入院期間が記載されていない例が見られるので改めること。
  • 患者の病態により当初作成した入院診療計画に変更等の必要が生じた場合は、新たな入院診療計画を作成し、患者等に対して説明等を行うこと。
  • 症状、治療計画及び検査内容については、個々の患者の症状等に応じた具体的なものとすること。
  • 看護計画について、個々の患者の症状等に応じた具体的なものとすること。
  • 説明に用いた文書を患者等に交付するとともに、その写しを診療録に添付すること。
  • 看護計画について、患者等への説明に用いる文書の別添となっており、患者等に交付されていないので改めること。
  • 患者等への説明に用いた文書は、その写しを診療録に添付すること。
  • 患者等に説明し同意を得た旨を明確(患者の署名)にすること。
  • 入院診療計画書の書式について、特別な栄養管理の必要性の有無の記載欄がないので改めること。

能見 将志 プロフィール

診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。
診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。

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