介護分野におけるローカルルール等による手続負担の軽減

 介護分野の文書については、負担軽減が進められており、2021年度介護報酬改定では、文書負担軽減や手続きの効率化として、電磁的記録が認められたことや従業者の職種、員数及び職務の内容の変更の届出は年1回で構わないなどの見直しが行われました。

 政府の規制改革推進会議より、コロナ後に向けた成長の「起動」としてまとめられ、介護分野の内容も重点分野として記されています。その中で、介護分野におけるローカルルール等による手続負担の軽減が記載されています。他にも、特定施設(介護付き有料老人ホーム)等における人員配置基準の特例的な柔軟化、特別養護老人ホームにおける施設内の医療サービス改善なども記されています。

介護分野におけるローカルルール等による手続負担の軽減

<基本的考え方>

 深刻化している介護人材の不足や処遇の状況を踏まえ、10年先、20年先をも見据えつつ、必要な人に必要な介護サービスを提供し続けられる持続的な介護制度を構築する必要がある。この点、介護サービス利用者のケアに直接関わらない手続業務等の負担を抑制し、限られた介護人材が利用者のケアに集中できる環境を整えることが重要である。このような観点から、介護事業者による地方公共団体に対する各種申請・届出等における書類の様式や提出方法等に係るローカルルールを解消すること等により手続負担を削減し、介護職員が利用者に直接向き合える時間を拡充させる。 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>

a 厚生労働省は、介護事業者及び地方公共団体の意見も踏まえつつ、介護事業者が介護保険法(平成9年法律第 123 号)の関係法令の規定に基づいて地方公共団体に対して提出する指定申請関連文書、報酬請求関連文書、指導監査関連文書について、介護事業者は国が定める様式に基づいて作成の上、国が定める書類を添付して手続等を行うこととするための所要の法令上の措置を講ずる。

 その際、具体的な様式・添付書類を検討するに当たっては、現行の標準様式及び標準添付書類に準拠することを基本とする。また、国が定める様式及び添付書類には押印又は署名欄は設けないことを基本とし、あわせて、地方公共団体に対して押印又は署名を求めることがないよう要請する。

 なお、地方公共団体が地域の特性に照らして特に必要がある場合に、その判断によって、独自の規律を設けることを妨げないこととし、当該地方公共団体が当該独自の規律に係る申請・届出文書について独自の様式・添付書類を使用することを妨げない。

b 厚生労働省は、介護事業者が介護保険法の関係法令の規定に基づいて地方公共団体に対して行う手続について、その簡素化や利便性向上に係る国や地方公共団体に対する要望を随時に提出できる専用の窓口を設ける。当該要望については、介護事業者、地方公共団体関係者及び中立的な学識経験者の3者のバランスのとれた員数によって構成される会議体で改善等の対応を検討する仕組を構築し、内容及び件数、処理状況を整理し、公表する。地方公共団体に対する要望については、必要に応じて当該地方公共団体に対する助言等を行う。

c 厚生労働省は、介護サービスに係る指定及び報酬請求(加算届出を含む。)に関連する申請・届出について、介護事業者が全ての地方公共団体に対して所要の申請・届出を簡易に行い得ることとする観点から、介護事業者及び地方公共団体の意見も踏まえつつ、介護事業者の選択により、厚生労働省の「電子申請届出システム」を利用して、申請・届出先の地方公共団体を問わず手続を完結し得ることとするための所要の法令上の措置を講ずる。ただし、特段の事情があり、電子申請届出システムの利用を困難とする地方公共団体については、なお従前の例によるものとし、当該地方公共団体の名称を厚生労働省において公表する。

 なお、当該措置が完了するまでの当面の間、厚生労働省は、介護事業者が、その選択により、デジタル技術であって適切なもの(電子メールや地方公共団体が作成したWEB上の入力フォームへの入力等を含む。)又は書面によって、申請・届出を行うこととするための所要の措置を講ずる。

d 厚生労働省は、介護保険法の関係法令の規定に基づく介護事業者の届出であって、法人関係事項その他の事業所固有の事項以外の事項に関するものについては、届出手続のワンストップ化を実現するための所要の措置を講ずる。

 ただし、特段の事情があり、電子申請届出システムの利用を困難とする地方公共団体については、なお従前の例によるものとし、当該地方公共団体の名称を厚生労働省において公表する。

e 厚生労働省は、介護事業者が介護保険法の関係法令の規定に基づき行う必要がある申請、届出その他の手続に関する負担軽減に係る取組項目ごとの地方公共団体の実施状況や手続の利便性向上に係る地方公共団体の好取組事例を定期的に調査の上、公表する。調査に当たっては、地方公共団体ごとの手続のデジタル化の有無、厚生労働省の「電子申請届出システム」の利用の有無、押印廃止の進捗状況、紙による申請書類の有無も含めて確認し、公表する。

f 厚生労働省は、地方公共団体による独自ルールの明文化を徹底した上で、地方公共団体ごとの独自ルールの有無・内容を整理し、定期的に公表する。

【規制改革推進に関する答申(案)より】

介護保険部会 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会 資料より