介護事業所の送迎問題

 通所介護施設などでは、利用者をお迎えに上がる際とお送りする際の送迎業務があります。規模にもよりますが、時間に換算すると一日のうちの半分近くの時間が送迎に占められていることもあります。つまり、この送迎業務をどれだけ効率的に行えるかが施設の運営に大きな影響を及ぼすことになるわけです。
 通所介護事業所ではそれぞれ様々な方法で送迎ルートを作成しています。ホワイトボードに貼った利用者名を動かしながら考えたり、エクセルで送迎車別に振り分けたり、裏紙に書き込んだりと、施設規模や背景により様々ですが、共通しているのは「ルートは職員が考えている」ということです。
 送迎ルート作成用ソフトは、最近では様々なものがリリースされていますが、それを活用している事業所は全体の5%にも満たない状況です。
 理由の一つとして
「介護事業所の送迎表の作成の際には、考慮すべき要素が非常に多く入り混じっている」
というポイントが挙げられます。
 車いすのまま乗車される方、ワゴンタイプの車を運転できる職員の数など、多くの要素が送迎表作成担当者の頭を悩ませており、それらをすべて含んだ上で最も効率的な送迎ルートを作成してくれるシステムがない、というのが多くの現場の声です。
 しかし送迎ルートの作成に頭を悩ませ、重要な利用者のケアへ意識を向けることができないような状況があるのであれば、そこは改善をしていく必要があります。最近の送迎システムは精度も上がってきており、職員が作成したものと遜色のないルートや人員配分を考えてくれるものもリリースされてきています。
 大まかな作成はシステムに任せて、必要があれば最終的な微調整だけ職員が行うような体制を考える、というような柔軟な考え方がデジタルを活用した業務の効率化には必要です。
「質の高い送迎表」の作成のために、「質の高いケア」が疎かになることがないようにしなくてはなりません。

この記事を書いたパートナー

一般社団法人 アジア地域社会研究所 原田 和将

介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。

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