事業継続計画(BCP)の作成について

 2022年度の介護報酬改定で全サービスに事業継続計画(BCP)の策定が義務付けられました。経過措置として、2024年度までの策定することで問題ありませんが、なかなか作成が進んでいない状況があります。感染症対策や業務継続に向けた事業者の取組等に係る調査研究事業の報告書によると、調査結果によると、調査時点の 2021 年 11 月では、事業所・施設のおよそ 4分の1が BCP を策定済みであり、3 年の経過措置期間が終了する 2024 年 3 月時点では、事業所・施設の 4 分の 3 が策定する見込み。策定については、経過措置期間を十分に使って BCP を策定しようとしている事業所・施設がある可能性や、経過措置期間を過ぎても策定できないところが出る可能性もあるとのこと。策定できない理由は様々ですが、法人規模が小さいところがBCPの策定の目途が立っていない割合が高い傾向にあります。

 今回のBCPの策定は、新型コロナウイルスのような新興性感染症への対応や、自然災害などの危機的状況が起きた時に被害を最小限に抑えて、事業をどのように継続させていくための計画となります。BCPの策定の義務には研修要件なども含まれていますので、研修等を通じて、策定内容も見直しながら自施設・事業所にあった内容にブラッシュアップさせていくことが重要と考えます。

<工夫している取組(BCP 策定)>
○策定プロセス
(職員意見を踏まえた策定)
・現在、施設長が BCP の素案を作成中。施設の実態に合った計画になるよう職員同士で協議を予定している。
・全体会議の中で、全員で話し合い策定した。
・実際に職員に災害時等の状況での動きをイメージしてもらい、どうすればいいかの案を出してもらい策定している。
・当施設の職員に現職の地元消防団員や OB、また自衛隊を退官した者を採用しており、BCP策定時に意見を聴取した。
・各部署の所属長より職員が減員になった際に想定されることや実際に可能な業務について意見をもらい十分に話し合って策定した。
・社会福祉協議会という組織の性質上、介護事業所だけでなく、地域福祉、権利擁護、総務など各部門から担当者を集め、全体で策定した。

(研修内容を踏まえた策定)
・担当者が BCP 対策の研修を積極的に受けた。
・リスクマネジャーを今年度より配置し、BCP の研修を受けた後、策定を行った。

(外部意見を踏まえた策定)
・有識者や専門家に施設へ来てもらい、意見を聞いて対応した。
・専門家から感染対策に対する助言・指導を受け、より良い対策に取り組むことができた。
・月1回の感染対策委員会でメンバーの意見を聞きながら策定に努めた。また、同一法人の病院の事務長、医師、感染対策委員会から助言を得ながら策定した。
・市の担当者と相談し、アドバイスを得た。

○BCP の見直し
・各施設の防災担当者が月1回の会議に参集し、BCP についても適宜見直しを図っている。  

<工夫している取組(BCP 策定以外)>
○方針の統一・検討
・感染症に関して、利用者には感染症対策用品の提供と職員には日常の行動(マスク、 体温、外出時)に留意するよう徹した。
・取組の心構え(ウイルスを外から持ち込まない・内部で広めない・もらわない・わたさない)を統一した。
・地域の実情を踏まえて避難方法等について話し合った。
・事業所全体や自動車等、全体消毒を定期的に行い、毎日清潔を保つ。
・日頃から 3 密を避ける取組(換気・距離・クリアボード・手洗い消毒・検温・マスク)を行っている。

○研修
・毎月のヘルパー会議にて研修を行った。
・研修に演劇(シナリオ)を活用した。
・法人内研修にて全職員に周知徹底をする。

○訓練
・消防士に立ち会いを依頼し、訓練を行った。
・川がすぐそばにあるため、増水した場合に垂直移動することを想定した訓練を行っている。

○施設・備品整備
・洪水対策で階段に避難用のスロープを作成した。
・感染症対策として、サーマルカメラ、アクリル板を設置し、濃厚接触者にならないよう努めた。
・シールド、マスク、エプロン備品を確保し、感染が疑わしい利用者への接触対応の際、 活用した。
・日用品やインスタント食品等の備蓄を直ぐに行い、ライフラインが止まった時の問題点(電気、ガス、水道)の対策(代用品)を確保することができた。

○地域連携
・普段から地域の方々と関わりを持ち、情報共有に努めている。
・地域内の他事業所と連携して対策を進めている。
・感染症について往診医からの情報、指示、指導があり早めの対応ができている。
・自治体と連携している。施設外の視点で防災についてアドバイスをもらうなど、協力体制をとっている。
・安全確保のため、高台にある地域住民の協力を得て避難用の場所を確保した。

○職員・利用者等の健康状態のチェック
・職員の健康管理、感染疑いの早期把握、利用者の健康状態の変化、感染者や濃厚接触者発生時の想定シミュレーションを実施している。
・来園者の健康チェックを行っている。  

<BCP 策定や対策の実施による効果>
○安心感が得られること
・自然災害時の避難場所を把握することで職員の安心感を得ることができる。

○意識向上
・感染症、自然災害対策について管理職の意識が向上した。
・スタッフ間での意識が高まった。
・話し合いを行うことで、職員全体の感染症への意識が高くなった。
・自然災害時に冠水する地域の為、台風、大雨時の対策を行った。自然が相手のため、できないことが多くある中、できる範囲ではあるものの、対策することで、職員が災害に対する意識を高め、団 結することができた。
・想定される自然災害に関して、どのような災害があり、その可能性はどのくらいなのか職員間で情報を共有するきっかけになった。
・熊本地震の経験をもとに、自然災害への意識が高まっており、訓練等以前よりスムーズに実施できている。

○利用者・地域との関係性の構築
・地域の自治会長等と話すきっかけになり、また当事業所において避難が必要になった場合の避難方法等を地域の方々に知ってもらう機会となった。
・担当者会議やケアマネジャー・利用者の家族との集まりを実施できない時は、ウェブ会議システムを使用して、情報共有を行っていた。良い傾向としてケアマネジャーや家族からの問い合わせがよく来るようになり、利用者の状況を把握しやすくなった。

○円滑な対応の実現
・訓練時に迅速に対応できるようになった。
・感染症対策に関しては、防護服着脱のシミュレーションを毎月、実施しており、看護師によるチェック、評価を行っている。当初は順番や手法にミスがあったが、現在は介護職員全員がミスなく着脱できるようになった。
・感染症・自然災害発生時のスタッフの動きが分かるようになった。

【感染症対策や業務継続に向けた事業者の取組等に係る調査研究事業 報告書より】