【医療介護あれこれ】在宅医療における多職種連携③~退院後の生活を支える支援~

こんにちは、長パートナーからコラムが届きましたのでご紹介いたします。

さて、在宅医療における多職種連携の3回目ですが、今回は退院前後に実施される「退院後の利用者(患者)を支える支援」にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

入院している患者さまは「早く家に帰りたい」と願いつつも、在宅での生活に対し不安があると思います。それは自分自身や家族がこれからの生活をイメージできていないからではないでしょうか?

具合が悪くなったらどうしよう・・・
夜は一人になるし、暗いし…不安だなあ・・・
食事の準備で長く台所に立っていられるかしら・・・

在宅を開始するときも同様だと思います。
病院に行くことがしんどくなってきた・・・
忘れっぽくなってきた・・・気付けば今日のお薬飲み忘れている・・・
何となく、身なりがだらしなくなり、お風呂に入っているのかな・・・
体重が減ってきたけれど、何を食べているのかしら・・・
認知症でなんだか理解ができていないような気がする、大丈夫かなお祖母ちゃん・・・
何だか一日うとうとしている時間が長くなってきたけど、そんなに眠ってて大丈夫?

そのようなときに、かかりつけ医(在宅医)、看護師、介護の専門家、リハビリテーションのセラピスト、調剤薬局、管理栄養士・・・様々な医療・介護の専門職の方とケアマネジャーが中心となり、自宅での療養生活を支えるための支援を協議しますね。これが「担当者会議」です。

退院の前には、この担当者会議を病院内で開催し、病院での状況を在宅で関わる方々に伝えていくカンファレンスが行われます。これが「退院時共同指導」になるのですね。もしかすると「初めまして」の担当者さんもいらっしゃるかもしれません。
入院中に変化した患者さんの状態を入院中の主治医や担当看護師、セラピスト等の専門家から説明を受け、
在宅で支援するためにどんな「モノ」を準備する必要があるのかな?・・・
訪問看護を要する医療処置はどんな頻度で行うことが必要かな・・・
栄養管理はどうしていこうか・・・
お薬は一人で飲めるのかしら・・・
誰かサポートしてくださる身内の方がいらっしゃるのかしら・・・
その方は、日中もいらっしゃるのかしら・・・日中は一人になるのかしら・・・
等ということを細かに話し合ってプランを立てていきます。福祉用具や住宅改修が必要になるかもしれませんし、酸素吸入等が必要になるかもしれません。

単なる入院の病棟から、在宅への申し送りの場ではなく、利用者の在宅療養での不安を解消するためにも、具体的な支援できることを話し合うことになります。
そして、参加した職種や人数により、診療報酬上に評価がついています。

【入院医療機関:退院時共同指導料2】(400点)
入院している医療機関の医師又は医師の指示を受けた看護師等が退院後の療養生活を支援する医療機関等に対して療養上必要な説明や指導を行い、その内容を文書にして提供した場合算定できます。
原則1人につき1回の算定ですが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する利用者の場合は、2回算定することができますが、その場合、1回は入院医療機関・在宅側それぞれの医師・看護職員が共同して指導を行う必要があります。

■医師共同指導加算(300点)
カンファレンスに、入院医療機関と在宅療養を支援する医師がそれぞれに参加し、共同で指導した場合に加算ができます。

■多機関共同指導加算(2,000点)
入院医療機関の医師又は看護師等が、退院後の在宅療養を支援する医師をはじめとする3機関(事業所)以上が参加して4者以上でカンファレンスを行う場合に算定ができる加算です。

<退院後の在宅療養を支援する医師をはじめとする3機関以上に該当するもの>
・退院後の在宅療養を支援する医師・看護師等・歯科医師・歯科衛生士、
・薬局の薬剤師
・訪問看護ステーションの看護師等(准看護師は除く)・PT・OT・ST
・ケアマネ・相談支援専門員のうちの、いずれか

【在宅医:退院時共同指導料1 1500点又は900点】
共同指導を行った場合に、在宅療養を支援する医療機関が算定します。これは、入院医療機関への訪問をするという手間の部分で高くなっているのではないかと思われます。
・在宅療養支援診療所の場合 ・・・1,500点
・在宅療養支援診療所以外の場合・・・900点

算定のポイントとしては、入院中に1回に限り算定ができるものであり、往診料等との併算定はできない約束になっています。カルテには、要点を記載し、文書の写しで代用することも可能です。患者及びその家族には、文書を交付することになっています。

■特別管理指導加算 200点
これは厚生労働大臣が定める状態等別表第8に該当する患者の場合に算定が可能です。

【訪問看護ステーション】
医療保険及び介護保険どちらでも、報酬が準備されています。
退院時共同指導加算    8000円 又は 600単位

退院の際に看護師等が主治医や医療機関などの職員とともに利用者や介護をする家族などに対して、在宅療養に必要な指導を行った場合に算定ができます。
これは准看護師が行った場合は算定できません
通常1回のみの算定となりますが、厚生労働大臣が定める疾患等別表第7と別表第8に該当する場合は、2回算定することができますので、ポイントとなります。

算定は初回の訪問看護費を算定する場合に、加算として算定することになります。

医療保険の場合、別表第8に該当する場合には、「特別管理指導加算(2000円)」が算定できますので、この点も覚えておきましょう。

【居宅介護支援事業所】
ケアマネジャーが退院前カンファレンスに参加した場合も、「退院・退所加算」が算定できます。これは以下の表のように、報酬が分かれています。

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退院後自宅にて不安のない療養生活を送るための支援をどのようにしていくかということについて、診療報酬・介護報酬の観点からも、様々に報酬という観点で評価されていました。
退院直後については、2週間医療保険を優先して訪問看護に入ることができますし、入院加療を行った医療機関からの「退院前訪問指導(580点)」「退院後訪問指導(580点)」として、算定が認められています。
特に「退院後訪問指導」については、退院後1か月以内に限り、5回まで算定が可能となっています。また、退院後利用する訪問看護ステーションや他の医療機関の訪問看護師と同行して指導を行った場合は、訪問看護同行加算として20点を算定可能です(1回に限り)

このように退院後の生活をサポートする仕組みができていますので、自院の診療の中で、何が算定できるのか、事務員さんもしっかりと学んでいきましょう。

パートナー 長幸美