【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「療養担当規則」

こんにちは、長パートナーよりコラムが届きましたのでお知らせいたします♪

皆さんは「療養担当規則」ということをお聞きになったことがありますか?
健康保険法により定められた「保険医療機関及び保険医療担当規則」が療養担当規則と言われています。 保険医療を担う医療機関が守るべき定めについて、全24条で定められており、保険医療を行う際の約束事です。

保険診療を行う上で定められた基本ルール」ですので、医療機関に働く皆さんも知っておくべきルールです。

【診療報酬の支払いルール】
保険診療として診療報酬が支払われるには、次の6つの条件をクリアしなければなりません。
① 保険医が、
② 保険医療機関において、
③ 健康保険法、医師法、医療法等の各種関係法令の規定を遵守し
④ 「療養担当規則」の規定を遵守し
⑤ 医学的に妥当適切な診療を行い
⑥ 診療報酬点数表に定められたとおりに請求を行う

我が国の医療制度は、「国民皆保険制度」であり、自らの意思により自由に医療機関を選ぶことができます(フリーアクセス)し、現物給付制度といい、医療行為を先に受け、費用は保険証の定めに応じた一部負担金を支払えば、保険者から支払いをしてもらえるという特徴があります。
また、皆さんが納めている保険料とともに、税金も使われているため、適正に医療を受け医療費を使うことも必要になるわけです。

このため、医療を提供する側・・・つまり医療機関や医師(医療者)が適正に医療を提供できるように「手順」や「方針」、「してはならないこと」が決められています。

ここでは主なものを見ていきましょう。

【禁止事項】
■無診察診療の禁止
医師は自ら診療を行わずに投薬や治療を行ってはならないとされています。また、診断書や処方せんの交付についても同様です。これは医師法の中の規定ですが、療養担当規則の中にもあります。医師法では違反した場合、50万円以下の過料が課せられます。

■診療録の記載及び保存
医師は診療をしたときには、遅滞なく、診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません。また、診療録は5年間の保存義務があります。
現在、電子カルテを活用されている医療機関も多いと思いますが、カルテの記録は、診療報酬上の請求の根拠であることも認識しておかなければなりません。このため、診療の都度記載することや、傷病名を整理すること、算定するにあたって、記載すべき事項が定められている項目については、十分に留意し、記載する必要があります。
事実に基づいて必要事項を記載していなければ、不正請求の疑いを招く恐れがあります。

■診療の範囲
療養担当規則の第一条には、保険診療の範囲が規定されています。ここで注意が必要なことは、「医療の範囲」と「保険診療の範囲は異なる」ということです。
患者がどんなに望んでも、学会が最先端医療として有効であると発表されていても、「保険診療」として認められていない治療法や検査等は、レセプト請求はできないことを意識する必要があります。
また、保険診療では、「懇切丁寧に療養の給付を担当しなければならない」こと、患者の療養上妥当適切なものでなければならない」ものとされていることも意識しましょう。

■特定の保険薬局への誘導の禁止
処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行ってはならない、とされています。
従って、門前薬局であっても、「この薬局で薬をもらって帰ってください」ということはできません。

■経済上の利益の提供による誘引の禁止
一般の小売業であれば、「キャンペーン期間中〇%オフ」などの割引等が認められますが、医療機関の場合、患者に対して、または事業者や従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することは禁止されています。
健康保険事業は公的な事業になります。この健全な運営を損なう恐れがあるため、経済上の利益の提供により自己の保険医療機関で診療を受けるように誘引してはいけません
また広告規制もありますので、看板等を出す場合、ホームページでの掲載内容については十分注意が必要です。

■診療の具体的方針
療養担当規則の中には、診療の具体的方針として漫然とした治療に対して、認められないものと規定されています。
例えば、投薬は必要があると認められる場合に行うこと、みだりに反復せず、症状の経過に応じて投薬内容の変更を考慮すること、注射は経口投与が行えない場合や治療の効果を期待することができない場合に行うことなどが掲げられています。
この中に、後発医薬品についても記載があり、「後発医薬品の使用を考慮すること」が求められています。

■特殊療法等の禁止
特殊な治療法については評価療養・患者申出療養に規定があり、届出がないものに関しては一連の診療すべてが自由診療になります。

■研究的検査の禁止
治験については、保険外併用療養費制度を用いたものが認められています。

■健康診断の禁止
保険診療は疾病や負傷など診療の必要があると認められる場合に行うよう定義されています。健康診断は保険給付の対象にはならないことに注意が必要です。

知っておいてほしいことは、「標準的な医療」を「適正に」提供することが求められていて、どこそこ学会や何とか大学の先進的な診療については保険給付が認められていないことです。最近の査定の状況をみていて、この「療養担当規則違反」とみられての査定が増加傾向にあります。この「療養担当規則違反」と判断されると、個別指導の大きな理由の一つになりますので、十分に注意が必要です。憲法に基づき、国民の健康増進に寄与することと定められていますが、何でも保険診療ができるわけではないことを知りましょう!

パートナー 長幸美