【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「入院料算定の五つの要件」

こんにちは、長パートナーからコラムが届きましたのでご紹介いたします。

入院基本料を算定するために、基本的なルールが決められています。これが入院基本料の通則です。どの入院基本料においても、算定要件とされていますので、注意が必要です。
本日はその中で「通則7」を見ていきたいと思います。

■通則7 入院基本料の算定要件
入院基本料は「入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制について、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、第1節及び第3節の入院料の所定点数を算定する」と定められています。
第1節とは、入院基本料のことで、第3節とは特定入院料のことを指します。

つまり、上記5項目については対応しなければ入院基本料や特定入院料を算定してはいけないということです。・・・ちょっと怖いですよね・・・皆さんの医療機関は大丈夫ですか?

■入院診療計画書の基準
入院の際に「医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し説明を行い、同意を得ること」とされています。
内容については、「病名」「症状」「治療計画」「検査内容及び日程」「推定される入院期間」等について、1週間以内に実施するように定められています。

形式はクリニカルパスの形式でもよいのですが、この指定された様式にある項目は網羅しておく必要があります。また、原本を患者に交付し、写しをカルテに添付が必要です。

■院内感染防止対策の基準
流水による手洗いの徹底と速乾式手洗い液等の消毒薬が適切に設置され、スタンダードプリコーションが行われていることが要件です。また、委員会が設置され、月1回程度定期的に開催されていること、感染レポートが週1回程度作成されていること、レポートの内容を委員会の中で活用していることなどがあります。

院内感染防止対策委員会は病院長、看護部長、薬剤部門の責任者、検査部門の責任者、事務長など各責任者が参加することが求められ、その場で決めてすぐに実行することが求められます。

■医療安全管理体制の基準
「安全管理のための指針」が整備されている必要があります。これは医療機関の方針や基本的考え方、医療事故発生時の対応方法等が文書化されているものです。
重要視されているのが、インシデントレポートの活用などによる安全管理を行っているかということです。1件の事故の陰には30件のインシデントが潜んでいるといわれています。インシデントレポートの分析活用が医療事故防止に大事だといわれています。
委員会の設置も必要ですが、これは各部門の安全管理者が参加することになっており、必ずしも部署長が参加する必要はありません。
また、年2回程度の安全管理の体制確保にかかる研修を行う必要があります。

■褥瘡対策の基準
入院時に褥瘡に関する危険因子の評価を行い、この危険因子を有している患者やすでに褥瘡がある患者については褥瘡対策チームによる評価と診療計画を立てることが必要です。
褥瘡対策チームは、専任の医師、専任の看護職員で構成され、褥瘡対策の計画策定・評価を行います。実際に計画に沿って対策を実行する方は、病棟の看護職員で構いません。
この「褥瘡対策に関する治療計画」の中には、注意する項目の看護計画を立て、栄養状態の改善を図ることも盛り込まれています。

■栄養管理体制の基準
管理栄養士の配置が1名以上であることとともに、医師・看護師・その他の医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備し、予め栄養管理手順を作成しておく必要があります。
入院時には患者の栄養状態を医師・看護職員・管理栄養士が共同して確認し、特別な栄養管理が必要な場合は栄養管理計画を作成し、急患等の場合など当日作成できない場合は7日以内に作成することとされています。

■次期改定に向けて
次期改定はコロナ禍ということもあり、あまり大きな改定にならないのではないかということも言われていますが、医療法の改正により5疾病5事業に新興感染症対策が入り6事業になることが決められていますし、スタンダードプリコーションをきっちりと行うことと、経路別感染対策への学習と実践がとても重要になると感じています。
このような時期だからこそ、基準管理の観点からも、基本に立ち返り、安全・安心して必要な医療が受けられるように、院内を見直してみるのもいいのではないでしょうか?

パートナー 長幸美