【医療介護あれこれ】アルブミン定量(尿)

こんにちは、長パートナーからコラムが届きましたのでご紹介いたします。

今日は査定事例から考えてみたいと思います。
お問合せ内容は、初診の「糖尿病腎症」の患者さんへの「アルブミン定量(尿)」が査定されました。算定できないのでしょうか?というお問合せでした。
さて、なぜ査定されてしまったのでしょうか?

この事例を通して、少し療養担当規則に書かれている内容についても、一緒に考えてみたいと思います。

■アルブミン定量(尿)とはどのような検査でしょうか?
検体は「尿」です。糸球体障害の指標であり、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症など、糸球体に組織病変をきたす腎疾患患者で尿中に出現します。これらの一次性腎疾患では尿中蛋白(大部分はアルブミン)の検出がきっかけで病気が発見されることが多いとされています。
糖尿病やSLE、アミロイドーシスなど全身疾患の合併症として二次性に腎が冒される場合では、通常の検査法でアルブミンが検出された時点ではすでにかなり組織変化が進んでいます。しかし、糖尿病の場合ですと、腎症を早期に発見できれば血糖値を厳密にコントロールすることによって、ある程度腎症の進展を防止しうるので、できるだけ早期に尿中アルブミンを検出することが望ましいとされています。

■適応疾患は?
高値:急性・慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症、腎盂腎炎、膠原病、全身性血管炎、アミロイドーシス、高血圧症
ただし・・・糖尿病の患者の場合ですと、「糖尿病性早期腎症」の発見に有用であるとされています。

■療養担当規則の検査の位置づけ
保険診療を行う上で、検査については、様々に記載があります。
① 特殊療法・研究的診療等の禁止(第 18 条、第 19 条、第 20 条)
医学的評価が十分に確立されていない、「特殊な療法又は新しい療法等」の実施、「厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物」の使用、「研究の目的」による検査の実施などは、保険診療上認められるものではない。とされています。

② 濃厚(過剰)診療の禁止(第 20 条)
検査、投薬、注射、手術・処置等は、診療上の必要性を十分考慮した上で行う必要がある、とされています。
つまり、必要最小限の検査で抑えるように、ということとともに、一般検査を行って、そのうえで、必要に応じて診断・治療のための検査を進めるように、ということが規定されているのです。
このため、簡易検査を行わずに精密検査を行うことは、濃厚診療と判断されます。注意が必要ですね。

③ レセプト病名はダメ!
病名で説明ができないものについては、コメントにて補うようにということも書かれています。

④ 検査・画像診断・病理検査を行う場合の指針
「各種の検査は、診療上必要な検査項目を選択し、段階を踏んで、必要最小限の回数で実施する。」とされています。
つまり、定性検査を実施して必要に応じて精密検査を行うように。と規定されているのです。
実際の査定事例を見ると、10万人に一人の割合と100万人に一人の割合で発言する疾患については、発現率が高い疾患を否定したうえで発現率が低い疾患の鑑別診断を行う手順を踏まないと、査定対象になってきます。

⑤ 検査の実施方針について
「療養担当規則の規定により、各種の検査は診療上必要があると認められる場合に行うこととされており、健康診断を目的とした検査、結果が治療に反映されない研究を目的とした検査について、保険診療として請求することは認められていない。また、検査は、診療上の必要性を十分考慮した上で、段階を踏んで必要最小限に行う。」とされています。

つまり、今回の場合は、尿一般検査を実施して、「微量アルブミン量」の測定が必要な糖尿病患者について、実施した場合に認められる検査といえます。

■社会保険支払基金での見解
社会保険支払基金では、審査情報として、次のような文書が出されています。

(出典:社会保険診療報酬支払基金「審査情報提供」より)

さあ、皆さん如何でしょうか?
検査一つとっても、これだけのことを考え判断してそれでも必要であれば、「コメント」もしくは「症状詳記」により必要性を補っていく必要があるわけですね。

健康診断後の受診や他医療機関からの紹介による専門医受診の場合ですと、定性検査については重複検査をおこなわないために、コメントで「他院でスクリーニング検査を受けている」ということをコメントすることで、査定を防止することができます。
また、病名も注意しましょう!
糖尿病の患者の場合は、「早期腎症」をいち早く見つけて、血糖コントロールすることが目的となります。実施するタイミングもしっかり見ていきたいと思います。

このように今回の情報では、病名の不足と、検査の手順を踏んでいないことから、「不適切な検査」として、査定を受けたものと思われます。
疾患の内容、検査の内容とどのような時に必要とされるものかをしっかりと理解して、請求業務を行っていただきたいと思います。
<参考資料>
〇社会保険診療報酬支払基金「診療報酬の審査・審査情報提供事例」より
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/teikyojirei/ika/kensa/jirei157.html

パートナー 長幸美