【令和3年度介護報酬改定】令和3年度介護報酬改定の方向性について③

こんにちは、M&C後方支援チームです。長パートナーよりコラムが届きました。

前回のコラムでは、「医療と介護の連携」「共生社会」の視点からお話を進めてきました。
今回は「自立支援と重度化防止の推進」について考えてみましょう。

この平成28年では、平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳と過去最高を記録しています。また、それに伴い、健康寿命も延伸しており、男性72.14歳、女性74.79歳となっています。しかしながら、平均寿命と健康寿命の差である不健康機関は男性8.84年、女性12.35年となっており、その間、何らかの医療的・介護的サービスが必要になると思われます。
85歳を超えると、要介護認定者特に要介護3以上の認定者が急激に増加してきます。その理由は多くは脳血管疾患や認知症、骨折等の関節疾患が多いのですが、高齢による衰弱や悪性疾患・難病等もあります。

こういったことを踏まえて、健康寿命延伸プランが作成され、これを基に介護保険支援計画が作成されています。

(出典:令和3年度介護報酬改定に向けて (自立支援・重度化防止の推進)より)

つまり「地域支援事業」の位置づけと役割を見直していくということになろうかと思います。

【介護予防活動】
■運動と栄養管理
口から食べる」という取り組みに対し、前回改定でも大きく評価され、様々なサービス提供においても加算として評価がついていました。
介護予防活動として、全身と口腔の運動の関係性について研究報告が出され、「口腔機能の低下」や「フレイル予防」としての食事内容(噛み応えがある食事や栄養価が高い食事)などとの関係が明らかになってきています。医科・歯科含めて介護予防として介入していくことにより、予防的効果があるということが証明されてきているのです。
こういったことを踏まえて、「運動」「口腔」「栄養」「社会参加」を総合的に考えていくことで、要介護者への重度化予防的効果に対し通いの場などでの取り組みが検討されています。

■地域リハビリテーション活動
地域における介護予防の取り組みを機能強化するために、地域ケア会議、通所・訪問介護事業所、住民運営の通いの場(サロン活動)等に対し、リハビリテーション専門職を派遣する体制を確保することが有意義であることが報告され、検討されています。
これまでも、退所後や通所時の関与など、リハビリテーションの専門職がかかわる効果があり加算や体制評価等で介護報酬として評価されてきましたが、このあたり、今回はこの支援について、市町村は医師会等との関連団体とも連携の上、医療機関や介護事業所等の協力を得て、予防事業に取り組む方向で検討がされています。医療としてのリハビリ専門職のかかわりに注目されています。

【介護の質の評価について】
■介護サービスの質の評価の視点
医療同様に、介護事業においても、質の評価について
① ストラクチャ―(構造)⇒サービスを提供するために必要な人員配置
② プロセス(過程) ⇒サービスの内容
③ アウトカム(結果) ⇒サービスによりもたらされた利用者の状態変化等
以上の三点について、評価し、介護報酬に導入されています。

具体的に言うと、施設系であれば、「老健」の在宅復帰率や「特養」の看取り数、通所系サービスであれば「通所リハビリ」の事業所評価加算、社会参加支援加算、「通所介護」のADL維持加算などが、アウトカム評価になると思います。
しかし、とても重要なことは「プロセス」つまり、その利用者の「やりたいこと」を実現するために「どう支援したか」ということだと思います。

■介護サービスの質の定義をどう考えるか
介護保険制度の理念・・・つまり、「自立した生活を行う上での支援」であり、何でもしてあげるのではない、ということが大事だともいます。地域包括ケアシステムの理念では「住み慣れた地域で暮らし続けることを地域全体で支えましょう」という大きなものがあります。介護事業所として、支えるために何ができるのか、そのためのスキルアップをどうするか、寄り添い方をどうするかということが大事なことになると思います。

■評価指標について
介護の質を評価するうえでは、「評価指標」を定め、評価指標の構成要素や客観性、評価の普遍性、妥当性が必要になってきます。

■科学的介護サービス
前回改定において「科学的介護サービス」という考え方が出てきました。これは自立支援等の効果が裏付けられた介護を実現するために、データベースをとるということで、VISITによるデータ収集が通所リハビリテーションと訪問リハビリテーションにおいて、実施されています。この解析を基に、どのようなサービス提供が良いかを分析・データの蓄積が行われています。

今回は「自立支援と重度化防止の推進」について考えてきました。医療では「エビデンスに基づく治療」といわれて久しいのですが、介護保険サービスも、科学的介護をはじめとして、データに基づき、自立支援を行うこと、重度化防止の観点がとても重要になってくることがお分かりになると思います。

パートナー 長幸美