【令和4年度診療報酬改定】感染対策向上加算~感染防止対策加算の見直し~

こんにちは、長パートナーからコラムが届きましたのでご紹介いたします。

今回の改定は近年の「新型コロナウイルス感染症」の拡大について、これまでは経過措置や特例措置について、整理し、一部診療報酬改定の中で評価がされています。
また、「地域の連携」ものについて、多数評価がついています。今回の感染対策向上加算についてもその一つで、地域の感染対策にどのようにかかわっていくかということを問われているように思います。

診療所向けには、外来診療時の感染防止対策について、新設されています。
前回のコラムをご覧ください。

■感染防止対策加算⇒感染対策向上加算(名称変更)
①感染対策向上加算1 390 点⇒710点
<施設基準追加>
感染対策向上加算2・3、の医療機関と連携していること
・1名の専従者(医師又は看護師)の業務のなかで、加算2・3の医療機関に対する助言業務を専従業務とみなすことができる
・他の感染対策向上加算1の医療機関との連携するために必要な体制が整備されていること
・感染制御チームにより保健所及び地域の医師会と連携
・加算2・3の医療機関と合同でカンファレンスを行う(年4回程度)
・・・うち1回は新興感染症の発生等を想定した訓練を実施すること
・加算2・3または外来感染対策向上加算を算定する医療機関に対し、必要時に院内感染対策に関する助言を行う体制を有している
・院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること
・新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制を有し、ホームページ等により公開していること
・新興感染症の発生時等に、感染症患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制を有すること
・外来感染対策向上加算にかかる届出を行っていない
・ほかの感染対策向上加算1の医療機関と連携・・・相互評価(年1回程度)
・抗菌薬を適正に使用するために必要な支援体制が整備されていること(現行と同様)

②感染対策向上加算2  90 点⇒175点
<施設基準追加>
感染対策向上加算1にかかる医療機関と連携していること
・専任の薬剤師・・・適切な研修を終了した薬剤師でも可能になった
・専任の臨床検査技師・・・適切な研修を追加した臨床検査技師でも可能になった
感染対策向上加算1にかかる届出医療機関との合同カンファレンスの参加(年4回程度)、うち1回以上訓練に参加している
・新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者又は疑い患者を受け入れる体制を有し、そのことについてホームページ等により公開していること
・新興感染症の発生時等に、感染症患者又は疑い患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制を有すること
・新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関等とあらかじめ協議し、地域連携に係る十分な体制が整備されていること
・外来感染対策向上加算の届出を行っていない

感染対策向上加算3(新設)75点・・・小規模病院にも評価
(加算3については、入院初日及び入院期間が90日を超えるごとに1回)
<施設基準>
・一般病床の数が300床以下を標準とする
・人員配置・・・専任の院内感染管理者
部門の設置・・・感染防止対策部門、(医療安全管理部門を持ってみなしてもよい)、医師及び看護師の配置
感染制御チームを組織する・・・日常的な感染防止にかかる業務を行う
⇒専任の常勤医師(歯科にあっては歯科医師)、
専任の看護師(適切な研修終了が望ましい)・・・医療安全管理者と兼任不可
感染防止対策加算1の医療機関との連携
感染対策向上加算1の医療機関が主催するカンファレンスに参加・・・年4回程度
⇒複数の感染対策向上加算1の医療機関と連携する場合は、すべての連携している医療機関が開催するカンファレンスに年1回以上参加し、合計年4回以上参加していること
⇒感染対策向上加算1の医療機関が主催する新興感染症の発生等を想定した訓練に少なくとも年1回以上参加している
院内の抗菌薬適正使用について、連携する感染対策向上加算1の医療機関もしくはその医療機関と連携した地域の医師会から助言を受けること
細菌学的検査を外部委託している場合は、薬剤官需政権あに関する詳細な契約内容を確認し、検査体制を整えておく(中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス)
感染防止対策の業務指針及び院内感染管理者もしくは感染盛業チームの具体的な業務内容が整備されている
マニュアル(手順書)の整備・各部門への配布、定期的な見直し
⇒最新のエビデンスに基づき、自施設の実情に合わせた標準予防策、感染経路別予防策、職業感染予防策、疾患別感染対策、洗浄・消毒・滅菌、抗菌薬適正使用等の内容
職員研修・・・年2回以上、安全管理体制確保のための職員研修とは別に行う
感染制御チームによる定期的な院内巡視・・・週1回、感染対策の実施状況の把握及び指導
院内掲示・・・院内感染防止対策に関する取り組み事項
・第三者評価を受けていることが望ましい
・新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者又は疑い患者を受け入れる体制若しくは発熱患者の診療等を実施する体制を有し、そのことについてホームページ等により公開していること
・新興感染症の発生時等に、発熱患者の診療を実施することを念頭に、発熱患者の動線を分けることができる体制を有すること
・新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関等とあらかじめ協議し、地域連携に係る十分な体制が整備されている
・外来感染対策向上加算の届出を行っていない

入院基本料等加算の中にある感染対策加算が、より小規模の感染制御チームによる感染防止対策の取り組みに対し、地域の中で連携・支援しないと算定ができないことになります。「感染対策向上加算1」の医療機関は地域の中で、リーダーとなって他の医療機関の支援をし、地域をあげて一貫性のある感染対策が取れるようにしましょうという風にも見えています。小規模な病院にとって、これだけの体制を確保していくことはとても難しいようにも思えますが、地域の連携は今後必須となってくるでしょう。ぜひ前向きに検討していかれることをお勧めします。

■指導強化加算及び連携強化加算 (新設)
地域の中で、感染対策を実施していくうえで、必要な体制を医療機関の枠を超え連携することで構築していけるように、加算が作られています。
それぞれの「感染対策向上加算1」を算定する医療機関は、いわゆる感染対策について、リーダー的な存在で、地域全体の感染対策についても目配りしてほしい、そして、「感染対策向上加算2・3」の医療機関は、加算1の医療機関の支援を受けながら、しっかりと受け入れるようにしてほしい、ということではないかと思います。
① 指導強化加算  30点・・・感染対策向上加算1を算定している場合
⇒感染対策向上加算2・3の医療機関と連携していること
⇒入院している患者について算定する

② 連携強化加算  30点・・・感染対策向上加算2・3を算定している場合
⇒感染対策向上加算1にかかる医療機関との連携体制を確保していること

サーベイランス強化加算 (新設)   5点
地域における感染防止対策に関して、情報提供できる体制についての評価です。
院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること、とされています。
感染対策向上加算2・3
・院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加している

地域との連携を進めつつ、医師会の役割についても、触れられています。これまであまりなかったように思いますが、新型コロナウイルス感染症対応により見えてきた地域の課題について、行政や医師会、も含めてしっかりと対応を考えていく必要がありそうです。

<参考資料>
〇個別改定項目(中医協_20220202) ・・・2~15pを参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000891477.pdf

パートナー 長幸美