「スキルベース組織」

 2024年の人材開発に関するトピックの中で、海外で最も話題を集めたキーワードの一つが、「スキルベース組織(Skills-Based Organization)」です。これは、学歴や職歴、職種といった従来の枠組みではなく、「個人が何をできるか」というスキルを軸に人材を捉え、配置・育成・活用していこうとする考え方です。AIや生成AIの普及、事業環境の急激な変化、人材不足の深刻化を背景に、海外企業を中心に急速に注目が高まりました。

 スキルベース組織の狙いは、社員が継続的に学び、必要に応じてスキルを再配置できる柔軟な組織をつくることにあります。これにより、変化の激しい市場環境にも迅速に対応でき、人材不足への耐性も高まります。 その中で示されているのが、スキルベース組織を成功に導くための4つの重要要素です。

 第一に、「事業に最も貢献する領域に集中すること」です。最初から全社展開を目指すのではなく、成果が出やすい部門で小さく始め、成功事例を積み上げていくことが重要とされています。 第二に、「事業戦略にしっかり紐づけること」です。人事施策として独立させるのではなく、経営課題や事業目標の達成に直結する形で設計する必要があります。 第三に、「テクノロジーは手段として使うこと」です。AIやシステム導入を目的化せず、解決したい課題を明確にした上で活用する姿勢が求められます。 第四に、「スキルを組織文化や人材施策と結びつけること」です。評価や育成、キャリア形成にまでスキルの考え方を組み込み、学び続ける姿勢を組織として支えることが不可欠です。

 また、スキルベース組織を機能させる上で重要なのは、個人の「好き」「特性」「強み」を正しく捉えることです。こうした要素は、必ずしも本人が自覚しているとは限らず、むしろ本人自身が気づいていないケースも少なくありません。そのため、上司やメンターといった第三者が日常の業務や対話を通じて、その人の特性や伸びる可能性を見極めていく役割が重要になります。あわせて、適性検査などの客観的なツールを活用し、個人の特性や志向性を可視化することも有効です。主観的な印象だけに頼らず、データと対話の両面から理解を深めることで、本人にとっても納得感のある育成や配置につながります。

 スキルベース組織は、単にスキルを棚卸しする仕組みではなく、人の可能性を引き出すための対話と支援の設計があってこそ成立するものだと言えるでしょう。

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